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TokyoDev Paul McMahon氏との対話 ブログから求人サイトへ:日本のソフトウェア業界に20年携わってきたポール・マクマホンが見出した「市場の誤解」とは

ZooKeep Academy インタビューシリーズ

ブログから求人サイトへ:日本のソフトウェア業界に20年携わってきたポール・マクマホンが見出した「市場の誤解」とは

インタビュアー:郡司史徳(ZooKeep株式会社 マーケティング責任者)

ポール・マクマホン氏は、日本在住の海外出身ソフトウェアエンジニアの就職を支援する求人サイト兼コミュニティ「TokyoDev」の創業者だ。カナダでコンピューターサイエンスを学んだ後、2006年にワーキングホリデーで来日した。実務経験もこれといった計画もないまま、とにかく違うことをやってみようという気持ちだけで日本に渡った青年は、それから20年をこの国のソフトウェア業界の只中で過ごすことになる。モバイル開発の受託会社を共同創業し、日本で最も広く使われるイベント管理サービスの一つとなった「Doorkeeper」を立ち上げて育て、そして個人ブログとメーリングリストを、海外エンジニアにとって最も信頼される情報源の一つへと育て上げてきた人物である。

今回のZooKeep Academyインタビューでは、郡司史徳(ZooKeep株式会社 マーケティング責任者)がポール氏と対話する。テーマは、日本のソフトウェア人材不足を生んだ歴史的な構造、海外エンジニアの受け入れに日本企業が本当に必要としているもの、そして市場が多くの人が思うより転換点に近いかもしれない理由についてだ。

対談の中心テーマ

  • SIer時代の二重の縛り:発注企業には「際限のないカスタマイズを求めてよい」という期待を、エンジニアには「意思決定せず指示をこなす」という働き方を刷り込んだ。この二つの負の遺産は、今なお解消の途上にある。 

  • 2011〜2012年の転換点:自社製品を自ら作る日本のプロダクトスタートアップが台頭し、ソフトウェアエンジニアという職業の地位と、それに伴う期待値が変わっていった。 

  • 日本語不要の求人は1%未満:それを提供する企業は、ほぼ定義上、最も報酬水準が高く競争力のある企業でもある。「グローバル化」に本気で取り組む野心的な企業だけが、そこに至るための組織的な労力を払う覚悟を持っているからだ。 

  • 統合の成否を分けるのは組織構造:日本人だけのチームから国際的なチームへの移行に成功している企業には、ほぼ例外なく、経営層またはその近くに実権を持つバイリンガルのリーダーが存在する。 

  • TokyoDev 2025年調査:海外エンジニアの年収中央値は950万円(前年850万円から上昇)。海外エンジニアを積極的に雇用している日系企業では、CI/CD(継続的インテグレーション・継続的デプロイ)、自動テスト、Infrastructure as Codeなど、最新の開発プラクティスの導入と強く相関していた。 

  • 男女間賃金格差はキャリア6年目を境に広がる:格差は経験年数6年を境に急激に開き始め、10年目には67%にまで広がる。ポール氏はその背景に、残業文化や飲み会文化といった構造的な職場慣習があると見る。 

  • 米国のAIによるレイオフは日本にはまだ波及していない:ポール氏はAIの近い将来の最大のインパクトを、言語の壁を下げて直接コミュニケーションを可能にすることだと見ているが、翻訳ツールが文化のギャップまで埋めるわけではないと釘を刺す。

なぜ日本だったのか

バンクーバーの青年を日本に導いた、小さな偶然の連鎖。

まずは生い立ちから伺えますか。ご家族はどんな方たちでしたか?

生まれはカナダのバンクーバーです。父は起業家でした。大学時代に取り組んでいた数学の修士論文、シリコンウェハーの製造にコンピューターを活用するという研究を事業化した人です。80年代初頭のことで、当時この分野に取り組んでいる人はほとんどいませんでした。それが自然にビジネスへと発展していったんです。私が10代の頃に父はその会社をイグジットしています。母は美術史の教授で、私が5歳くらいまで教えていましたが、その後は専業主婦として私と二人の姉妹を育てました。

子供の頃のある出来事は今でも覚えています。私が「誰かがこれを発明すればいいのに」と父に言ったとき、父は「そうだね、もしくは君が発明すればいいんじゃない?」と言ったんです。その言葉が、自分にも何か新しいものを生み出せるかもしれないという種を植え付けてくれたのかも知れません。思い返せば、起業家としての側面は父から、人を大切にする、社会正義を気にかけるといったより人間的な側面は母から受け継いだのだと思います。TokyoDevは結局のところ、その両方が合わさったものです。社会的ミッションを持ってビジネスをする、ということです。

2006年、実務経験のないコンピューターサイエンス卒業生としてワーキングホリデーで来日されました。数ある国の中で、なぜ日本だったのでしょうか?

実は大学時代に遡ります。もともとバンクーバーのコミュニティカレッジに、何をやりたいかもわからないまま入学しました。ほとんど偶然にコンピューターサイエンスの授業を選び、それが本当にしっくりきた。編入先の大学でカウンセラーから日本での就業体験プログラムがあると聞いたのも、ちょうどシェアハウスの同居人の一人が日本でワーキングホリデーをした経験があり、もう一人は日本人でカナダでワーキングホリデー中だったのも、同じ時期のことでした。就業体験プログラムのスケジュールとは自分の都合が合わず参加できなかったのですが、プログラムに頼らず独自のやり方で試してみればいいと思ったのです。

このように日本はすでに頭の中にあり、カナダとは考え方も文化も違うけれど、同じくらいの社会経済水準で、「初めての海外」として良い行き先だと感じていました。

起業家としての助走

受託開発の傍ら育てたプロダクトが伸び悩む中、もう一つの趣味で始めたブログが人気を集めていた。

初期のキャリアを聞かせてください。

日本に来る直前、オンラインで日本での求人を探していましたが、日本語力のない、実務経験もないジュニアなソフトウェアエンジニア向けの求人はほとんどありませんでした(苦笑)。ただ一つ、明らかにソフトウェアエンジニア自身が書いたとわかる求人があったんです。来日前に求人企業宛にメールを送って面接をセッティングし、なんとか採用されました。そこは、開発チームがほぼ全員海外国籍のメンバーという日本のスタートアップで、エンジニアは10人ほど。彼らから多くを学びましたが、会社のビジネスモデル自体はあまり理にかなっていませんでした。2年半勤めた後、同僚数人と一緒に退職しました。

その同僚だった仲間と、Moblinというソフトウェア受託開発の会社を立ち上げました。特に明確なビジョンがあったわけではなく、自分たちの人脈や、前職の同僚、業界イベント、そしてSEOからクライアントを獲得しました。当時、私たちは日本のガラケー向けのモバイルアプリ開発に特化し、その知見を英語で発信したところ、Estee Lauderなどの外資系クライアントをはじめ、何社か獲得することができました。チームは全員がエンジニアだったので、直接営業よりブログを通じたコンテンツマーケティング手法の方が我々に合っていた。このインバウンド型のアプローチは、それ以来ずっと自分のパターンになっています。

Moblinの副業として取り組んでいたのがDoorkeeperです。

もともとは、自社の開催するネットワーキングイベント向けの受付管理ソリューションでした。汎用化してTwitterで発表したものの、最初の1か月は誰も使ってくれなかった。それでも自社コミュニティのイベントに活用し続けていくうちに、自社以外のユーザーによる利用が増え、2013年頃には日本のテック系コミュニティで最も使われているイベント管理プラットフォームになっていました。

ただし、ビジネスとしてはDoorkeeperは長く苦しみました。プラットフォームとしては、年間1億円以上のチケット売上を処理していても、自社の有料チケットイベントに対する手数料収益モデルによる収益はごくわずか。数年経って諦めかけたとき、思い切って無料アカウントを廃止し、有料サブスクリプションモデルに切り替えました。それにより、多くのユーザーが離れてしまいましたが、残ったユーザーだけでようやく自分にまともな給料を払えるようになった。その一方で、個人ブログのTokyoDevは独自に成長を続けていました。

TokyoDevはもともと個人ブログだったそうですね。いつからそれ以上のものになったのですか?

2010年頃から、自分自身の日本で働くソフトウェアエンジニアとしての経験について書き始めました。完全に自分のために書いていたんです。多くの人が日本での就職の仕方を尋ねてくるようになったので、それに関する記事を書き、メーリングリストでティップス情報として求人情報を送るようになりました。そのうち、実際にそれ経由で採用されたという声が届くようになり、この分野での人材紹介会社の手数料の高さも耳にするようになった。何かがひらめいたんです。ここにビジネスがあるかもしれない、と。

2015年頃からTokyoDevで成功報酬型の課金を始め、2019年か2020年頃にはDoorkeeperよりも収益を上げるようになっていました。そこで2021年にDoorkeeperをマイクロPEファンドに売却し、それ以降はTokyoDevだけに集中しています。

求人サイトだとおっしゃいますが、ブログを拝見する限り、それだけではない気がします。

TokyoDevは最初からビジネスだったわけではありません。

同じ立場の仲間を助けたいという思いから始めた個人ブログで、それは今も一貫して中心にあります。求人サイトは私たちのマネタイズの手段であって、やっていることの一部に過ぎません。十分な情報が出回っていないのに本来あるべきだと感じる領域には、幅広くコンテンツを提供したいと思っていますし、最近はゲストライターにも門戸を広げています。公募したときは2週間で40人からTokyoDevへゲスト投稿したいという連絡がありました。自分一人では絶対に書けなかった内容や視点を得られましたし、コミュニティが実際に直面している課題との距離感を保つ助けにもなっています。

SI時代が刻んだ「二つの縛り」 スプレッドシートの仕様書が、発注企業とエンジニアの双方に染み込ませた思い込み。

日本のハイスキルなソフトウェア人材不足の背景にあるものは何でしょうか?

私が2006年に来日した頃、日本のソフトウェア開発のほぼすべてはSIer、システムインテグレーターによって行われていました。自社のためにソフトウェアを作る会社ではなく、他社に依頼されてカスタムソフトウェアを作る会社です。SIerは時間単価で請求するビジネスで、彼らの収益は営業やリレーション管理のうまさから生まれるもので、作った製品の質からは生まれない。納品したものが顧客にとって本当に効果的かどうかは、彼らの関心事ではなかったんです。そういう背景から、SIerには優秀な人材を採用するインセンティブがあまりありませんでした。

私も前職でSIerと関わることがありましたので、読者のために、当時のプロセスについて少し補足させてください。

郡司:私自身、ソフトバンク在籍時に典型的な日本のSIerと仕事をする発注側の立場だったんですが、SIerから要件ID、カテゴリ・サブカテゴリ、要件名、優先度、対象業務、入力・出力情報といった項目が並ぶ仕様スプレッドシートを渡され、それをもとにSIer側のプロジェクトマネージャー(似ているようですが、プロダクトマネージャーとは大いに異なる役割です)にビジネス要件を伝える。プロジェクトマネージャーはそれをシステム要件に落とし込み、技術に詳しくない発注側に差し戻し、UIやUXがどう見えるか想像もつかないまま、テキスト情報ベースの打ち合わせを何度か経て期限までに要件定義書にサインオフをします。そこでSIerは「ここに書かれている通りに作ります」と言い、実際にその通りに作る。効果的かどうか、使いやすいかどうかの保証はどこにもありません。

ある意味、UIデザインが悪ければ悪いほど追加の修正がすべて課金対象になるため、SIerの収益は上がっていく。ソフトウェア開発は「誰にでもできること」として扱われ、企業が適性に関係なく新卒に3か月間のエンジニア研修を受けさせてそのまま現場に出す時代で、開発者全体の水準は低いままでした。企業もそれに価値を見出さなくなり、優秀な人がその仕事をやりたいと思う理由がなくなる。そういう市場的な背景から、日本のソフトウェアエンジニアの給料は低く、長時間労働、指示されたことをやるだけの仕事というイメージが定着してしまい、それが現代は非常にクリティカルな人材グループの活力を奪ってしまいました。

「SaaSはユニクロ」的な発想 

日本のSIer時代が残したもう一つの影響は、発注企業が今もソフトウェアベンダーに対して抱きがちな姿勢だ。多くの企業は今も、オーダーメイドのスーツのように、自社プロセスを全体を採寸してもらい、自社の要望に完璧にフィットするソフトウェアを期待している。しかしSaaSはそういうものではない。SaaSを買うのはむしろユニクロ店舗に行くようなものだ。S、M、Lのサイズといくつかのベーシックカラーが「既製品」として棚に並んでいて、顧客はその中から一番フィットするものを選ぶ。この二つのメンタルモデルのミスマッチこそ、日本企業が今もソフトウェアベンダーにとって扱いにくい顧客になり得る理由の一つである。

このようなエンジニア市場の変化の兆しはいつ頃からですか?

2011年から2012年頃、自社のソフトウェアプロダクトを作る日本のスタートアップが次々と登場し始めました。自社プロダクトを作るとなると長期的に日々利用するユーザーと向き合う視点が必要になり、優秀で自分の仕事に誇りを持てるエンジニアが必要になる。私はこの変化を、日本のRuby開発者コミュニティの中ではっきりと目にしました。当初はSIer企業でRubyすら使わせてもらえなかった人たちが興味本位で集まっていたコミュニティでしたが、数年のうちにその場に参加していたメンバーが次々と新興スタートアップのCTOや部長クラスになっていった。ソフトウェア開発者が企業内で重要な存在になるにつれ、企業側も国内で見つからないシニア人材を海外に求めるようになったんです。

海外エンジニア人材市場:データが示すもの

日本語不要の求人は1%未満。その1%を用意できる企業は、本気でグローバル化に向けて組織を作り変えている企業でもある。

TokyoDevは日本にいる海外エンジニアを対象に毎年調査を行っています、始めたきっかけは?

調査を始めたきっかけは、日本のソフトウェア開発者を取り巻く市場環境が良くないという話がよく聞かれる一方で、それが自分の周りの仲間たちの実感とは違っていたことです。海外エンジニアとして日本で働くことが実際どのようなものであり得るかを示したくて、毎年この調査を続けています。

(日本で)日本語力を必要としないエンジニア求人はどれくらいの割合ですか?

おそらく1%未満です。完璧でなくても日常業務をこなせる程度のビジネスレベルの日本語であれば求める企業は増えていますが、本当に英語のみで完結するポジションは稀です。

ポール・マクマホン氏:
「英語だけで完結するエンジニア求人を出している企業は、ほぼニアリーイコールで日本で最も優れたテック企業のカテゴリーに当てはまるとも言える」

そうしたポジションを提供する企業に共通する特徴は何ですか?

日本のソフトウェア開発が変化する中で進化してきた企業です。初期は自社プロダクトを作るスタートアップが中心でしたが、最近はDay1からグローバル企業を目指す日本人創業者も増えています。日本の国内市場は大きいものの成長市場ではないという「罠」を理解した上で、創業当初からグローバルに戦える国際的なチームを作っている企業が増えてきました。

TokyoDev「2025年度開発者調査」のハイライト 

81か国から約1000人が回答(前年比21%増)

  • 海外エンジニアの年収中央値は950万円で、前年の850万円から上昇した。
    日本本社企業内での海外人材と国内人材の報酬格差は、2022年の93%から2025年の35%へと縮小したが、これは主に海外子会社の報酬水準が下落したためで、日本企業側の報酬が追いついたためではない。



  • 英語を頻繁に使う層は、あまり使わない層に比べ、継続的インテグレーション(70%対45%)、自動テスト(59%対28%)、Infrastructure as Code(49%対25%)の導入率が明確に高かった。ウォーターフォール型開発だけは、英語利用の少ない企業でより多く採用されていた唯一の項目だ。



  • 回答者の94%が日常的にAIツールを利用しているが、それを雇用の安定性への脅威と感じているのはわずか19%
    AIをより頻繁に使う層は経験年数の中央値が6年と浅く、使わない層(中央値10年)と対照的で、最もシニアで判断力を要する仕事ほど自動化されにくいことを示唆している。 (注:TokyoDevの調査対象は、すでにTokyoDevやその周辺コミュニティに関わっている海外エンジニアという自己選択的な母集団であり、日本のエンジニア全体を代表するサンプルではない。) 

出典:https://2025.surveys.tokyodev.com/en-US/current-job/ https://2025.surveys.tokyodev.com/en-US/ai-usage/

グローバルチーム作りが失敗するケース

橋渡し役に頼る組織と、直接つながる組織の話

海外エンジニアを採用してもうまくいかないケースを多く見られてきたと思います。失敗や成功の共通点は何でしょうか?

ひとつのグローバルチームへの融合を成功させるには、経営層、あるいはその層に強い影響力を持つ人物による旗振りが必要不可欠です。単に海外人材を採用して既存組織のやり方に適応することを期待するだけでは足りません。企業側も、採用したグローバル人材に合わせて変わる必要があり、その変化を提言して実行できる権限を持つ人が社内に必要なんです。

成功している企業には、ほぼ例外なくこの種の旗振り役がいます。

海外エンジニアが最もよく口にする不満は何ですか?

先ずは報酬ですね。もちろん、円安の影響もあります(2026年7月時点で1米ドル=約162円と、1986年以来の円安水準に近い)。

報酬以外だと、先ほどの話に繋がりますが、入社先の企業が社内に二つの文化を作ってしまっているケースも挙げられます。どういう事かというと、社内における海外エンジニアチームの独自文化と、その他日本人によって構成されるビジネスチームの文化がそれぞれ存在している状態です。よく見る対処法は、バイリンガル人材がこの二つの社内グループの橋渡し役を担うやり方ですが、それだけでは単に余分な層を増やすだけで、橋渡し役の人はいずれ疲弊し、コミュニケーションの質が落ちて行きます。

成功している企業は、ビジネスサイドとエンジニアリングサイドが直接つながれる方法を見つけています。AIや翻訳ツールのおかげで、日本語話者と英語話者のテキストベースのやり取りはだいぶ楽になりました。しかしそれだけでは足りません。人間関係も同じくらい重要なため、あえて違うチームの人同士が隣り合って座るように設計されたオフサイトやランチの場を経営側がイニシアチブを取って提供しています。そうした取り組みをしている組織は、一体感の醸成に成功しやすく、事業の成功にも繋がりやすくなります。

賃金のジェンダーギャップ

社会人6年目を境にじわじわと開いていく賃金のジェンダーギャップ。

自社の調査データで男女間の賃金格差(ジェンダーギャップ)を発見し、Rails Girls JapanやWomen in Tech Japanといった団体への支援という行動につなげてきましたね。この格差が存在する理由についてどう考えていますか?

調査データを見ながらこれに気づいた時、私はこの分野の専門家ではありませんが自分ができる事は何かと自問自答した結果、すでにこのイシューに取り組んでいるコミュニティや団体を支援しようと決めました。ジェンダーギャップについて、あまり語られていないと感じるのは、文化的な慣習が間接的に女性を押し出してしまう、あるいは男性には求められない犠牲を女性に強いてしまっている、という側面です。呑み会文化がわかりやすい例です。共働きの家庭では、職場での呑み会に参加するのは母親より父親である場合が多い。誰かが子供の面倒を見なければならず、それがデフォルトで母親になってしまうからです。そこに明確な差別意図はありません。しかし、それが積み重なっていきます。

残業も同じ話です。本当に状況を変えたいなら、男性側も子育ての負担を分かち合い、女性が対等な立場でキャリアを継続できるようにする必要があります。

TokyoDev 2025年調査が明らかにした男女間賃金格差 

  • 調査対象全体では男性は女性より46%多く稼いでいる。しかしこの格差はキャリア初期には存在しない。

  • 経験年数6年以下の女性は男性と同水準の報酬を得ているが、経験年数7〜9年では男性が62%多く、10年以上で見ると67%多くなる。

  • 女性の32%が職場で性差別を経験したと回答したのに対し、男性は2%だった。

  • 日本での生活についての不満は回答者の国籍を問わず「報酬」がトップだが、日本在住の海外国籍の回答者は「孤立感や文化的な壁」を、日本人の回答者は「同調圧力」を2点目に挙げている。 

出典:https://2025.surveys.tokyodev.com/en-US/demographics/gender

市場の未来

AIは言語の壁を下げる一方、文化の壁までは取り除けない

日本には人手不足という課題がある一方、実際に採用され定着している海外エンジニアの数は予測されている需要ほど多くありません。今後5年間で何が起こると思いますか?

最大の障壁は受け入れ側である日本企業の適応力です。同じ言語・同じ文化を共有することが前提の環境から、それを前提としない環境への移行は本当に難しい。両方を経験した国際的な視野を持つリーダーが社内に必要ですが、そうした人材は一朝一夕には育ちません。

米国ではAI導入による解雇がシニア開発者を直撃していますが、日本ではどうでしょう?

今のところはそのような傾向は見られていません。米国では大手テック企業のシニア人材ですら次の仕事を見つけるのに苦労するような事象が起きていますが、それが日本でも起こるかはまだわかりません。そうした背景を持つ人たちが日本への移住を望んでいても、そもそも英語のみで働ける求人数が少なく、これまでも苦労してきました。

AIは言語の壁を下げてくれる一方、文化までは翻訳してくれません。ただ、様々なバックグラウンドの人材によって構成されるチームの融合が成功するかどうかの決め手になるのは、文化なんです。

日本にるソフトウェアエンジニア全員が目にする巨大な広告版があったとしたら、そこにどんなメッセージを掲げたいですか?

うーむ。「シリコンバレーに移住するか、日本企業に留まるか、二択ではない選択肢がある」ということですかね。日本国内にも、グローバルな開発チームを築いている日系企業が存在します。そうした企業に入り、グローバルなエンジニアに刺激されながら切磋琢磨すれば、日本にいながらも、よりグローバルなキャリアを築くための出発点になります。

なぜZooKeepなのか

ポールが気づいたこと。

先日、ポールさんは日本のATS(採用管理システム)に対する不満についてのLinkedIn投稿の中で、ZooKeepに触れていましたね。何がきっかけで注目したのですか?

ZooKeepについては、製品そのものよりもZooKeepチームの人に惹かれました。直接売り込むことよりも、教育や人助けによる市場の醸成に重きを置いているように見えたんです。だからこそイベントを共催したり、TokyoDevの顧客を紹介したりすることを喜んでやってきました。単なる営業の場にならないとわかっていましたから。先日のジョーダン(ZooKeepのプロダクト責任者)のセミナーでも、ZooKeepという社名やプロダクトの売り込みはほとんどなかったのが印象的でした。そのようなアプローチは、自分がずっと大切にしてきた仕事の進め方や価値観と重なりますし、多くの人が短期的な見返りばかり求めて売り込みすぎる業界の中で、新鮮に感じます。

おすすめの一冊 

プロダクトを作る前に、需要を確かめよう

これから起業家やエンジニアとしてこの市場に踏み出そうとする人に、薦めたい本はありますか?

エリック・リースの『リーン・スタートアップ』は本当に役に立ちました。あの本にはGroupon(グルーポン)のケーススタディが出てくるのですが、Grouponは実は一つのブログとサインアップフォームから始まった事業のです。ブログが人気になり、フォロワーが増え、それからプロダクトを作ったのです。つまり、本当に必要になるまで、ある程度の需要があると確認できるまでは、プロダクトを作らないという考え方は、まさに私がTokyoDevで取ったアプローチでした。最初はブログとメーリングリストだけがあり、実際のプラットフォームができる前から、自分の提供する情報をもとに人々が採用されるケースを確認できていた。だからうまくいったんです。

登壇者プロフィール

ポール・マクマホン(Paul McMahon)、TokyoDev創業者 日本で働く海外出身ソフトウェアエンジニア向けの求人サイト兼コミュニティ「TokyoDev」の創業者。カナダでコンピューターサイエンスを学び、2006年にワーキングホリデーで来日して以来20年、3つの事業に携わってきた。モバイル開発の受託会社Moblin、後に売却したイベント管理プラットフォームDoorkeeper、そして個人ブログから発展し海外エンジニアにとって最も信頼される情報源の一つとなったTokyoDevである。TokyoDevは一人体制で、パートタイムの協力者ネットワークを活用しながら運営しており、今年で5年目となる年次開発者調査も実施している。東京を拠点として20年になる。

インタビュアー・郡司史徳、ZooKeep株式会社 Head of Marketing(マーケティング責任者) ZooKeep株式会社のマーケティング領域を統括。ZooKeepは、採用管理システム(ATS)、AIソーシング、人事・タレントマネジメントコンサルティング、そして採用戦略と実行支援を一体化したプラットフォームを提供するHRテック企業。以前は、日本の大手企業向け新規事業開発を専門とするコンサルティング会社、SoftBank Robotics(立ち上げ期から国際展開まで)、MakeLeaps(COO就任後、M&Aによるイグジットおよびその後のPMI期間2年間を管掌)を経て、米国発HRテックユニコーンDeelにてAPACパートナーシップマネージャーを務めた後、現職。

ZooKeep マーケティングチーム|ZooKeep株式会社

製造業・IT/テック・金融(PEファンド)・コンサルティング業界の大手〜中堅企業で、エージェンシー依存からの脱却・採用コスト削減・グローバル採用強化・競争力強化に向けた組織変革やタレントマネジメントの強化を検討している経営層やHR/採用リーダーの方をご支援しています。

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© 2021–2026 ZooKeep株式会社. All Rights Reserved.

〒106-0047 東京都港区南麻布5丁目2番32号 興和広尾ビル5F TEL: 03-5860-204

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